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1年と6ヶ月前のこと。
120万円の土地を購入して6畳の豪邸を建てたことで生活資金が底を尽きた自分は東京へ出稼ぎに行くことにした。
これからは軽やかに生きていくと決めた。
前職で培ったスキルを活かしつつフリーランスで生計を立てることにした。
朝から晩まで続く労働に休日出勤。
次第に疲弊していくのがわかった。
それでも生活のために仕事を続けた。
自分の心に耳を傾けることなく。
カネのために働いた代償は大きかった。
当時の自分は疲れきっていたにもかかわらず眠ることができなかった。
食事を摂ってもゴムを噛んでいるような感覚だった。
訳がわからなかった。
これはヤバイなと感じてはいたものの、フリーランスとして歩み始めたばかりだったし、知り合いの紹介で得た仕事だったので簡単に辞める訳にもいかなかった。
そもそも今まで心を病んだことがなかったので、この状態がうつなのかどうかも正直なところわからなかった。
実際に病んでみないとこの感覚はわからないと思う。
1年以上経った今でも精神科に通うことが日常となっている。
この通院生活がいつまで続くのかなと思い、先日こちらから今後について先生に相談してみた。
薬にどっぷりと依存してきたが、これからは薬を減らしてみたいと思えるようになってきた。
相談の結果、服用頻度を減らしてみましょうという話になった。
毎日服用していた薬は2日に1回となった。
嬉しかった。
前に進めているという実感が湧いてきたことが嬉しかった。
ところで、一人暮らし・小屋暮らしの話題になると、いつも何を食べてるの?という質問をされることがある。
よほど面倒くさいと思わない限りは「具沢山の味噌汁と卵かけご飯です」と正直に答えるのだが、そうすると「毎日味噌汁ばかり食べるような食生活は栄養バランスが偏ってるよ?なんでもっとこだわらないの?」みたいなことをよく言われる。
以前はそうだった。
1日3食、バラエティに富んだ食事を決められた時間にその日の気分に関係なく胃袋が膨れるまで食べていた。
時にはアルコールで流し込むこともあったし、食べ過ぎ(または飲み過ぎ)で胃腸薬が必要になることもあった。
そんな食生活も小屋暮らしを始めてからは変わった。
毎日の食事は味噌汁と米である。
晴れの日も雨の日も。
元気な時も疲れている時も。
うつ病になってからは味覚を感じることのありがたみがわかるようになった。
心の状態によって味覚が変化することも知った。
季節が変化するように、人の心も日々変化する。
心が変化すると味の捉え方も変わってくる。
さらに、その日の気分によって具材を変えることで唯一無二な味噌汁となる。
周りからすればバランスが偏っていて飽きてしまうような食生活に見えるかもしれないが、自分にとってはその日その時にしか味わえない大事な食事だし、毎日が新鮮だ。
そして、新鮮な気持ちで毎日を過ごせるようになると、生活そのものが豊かになってくる。
「小屋暮らしとうつ病と味噌汁が僕の生活を豊かにしてくれた」
このことに気づくことができただけで、今まで生きてきてよかったなと思える。